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“名古屋絵付けガラス盛り”と名古屋の陶磁器産業の歴史

伝統技を創造的に伝承する和文化体験道場“名古屋絵付けガラス盛り”と名古屋の陶磁器産業の歴史

名古屋が日本の陶磁器産業の中心だった時代

名古屋市東区にある名古屋陶磁器会館には、明治から昭和にかけて名古屋から欧米向けに輸出された素晴らしい陶磁器コレクションが里帰り展示されています。

明治維新後、西洋に追い付かんと近代国家を目指して紡績や製鉄業など殖産興業が推し進められましたが、

陶磁器産業もその一つでした。

有田や京都など日本国中から絵付け職人が名古屋に集められて、瀬戸(愛知県)や多治見(岐阜県)で作った白素地に絵付け、焼成し、名古屋港から世界に輸出されていました。

当時、全国の陶磁器生産の4割を名古屋の陶磁器が占めていたそうです。

欧米に売れる洋食器を作らんと西洋絵付けや成型の技術を学び、そこに日本独自の感覚が加わって、また当時ジャポニズムが人気だったこともあり、日本の陶磁器の人気は非常に高いものでした。

名古屋絵付け

日常で使われる食器と異なり、装飾用の大きな壺や花器、絵皿は、職人たちの腕の見せ所と言わんばかりに

豪華で装飾的な成型や絵付けが施されましたが、名古屋界隈で施された絵付けは「名古屋絵付け」と呼ばれます。

「名古屋絵付け」の装飾技法を代表するモノの一つに「凸盛り(でこもり)」と呼ばれる「盛り上げ」技法があります。

「凸盛り」が施された人気の高い伝統的絵柄に、

「凸盛り竜」があります。

あいち産業科学総合センター 産業技術センター瀬戸窯業試験場 令和2年度研究参画試作品 (杉山ひとみ)

伝統技法「名古屋絵付け」を未来につなぐために!

講師の杉山ひとみ先生は、イタリア在住中に西洋絵付けを学ばれました。

イタリア滞在中に「名古屋絵付け」の流れを汲む技法に出会い、日本に帰国後、「名古屋絵付け」の「手描き」を中心とした職人技の研究を始められました。

以来、講演やワークショップを通じて、「名古屋絵付け」の伝承活動に力を入れておられます。

(イタリア・ロンバルディア州認定Ceramista Decoratore Piccolo Fuoco、厚生労働省認定1級陶磁器製造技能士、ものづくりマイスター)

杉山先生を講師にお迎えし、昨年(2024年)11月23日、和文化体験道場「名古屋絵付けガラス盛り技法」を開催しました。

名古屋で生まれた文化を楽しく体験!「第3回名古屋絵付けガラス盛り技法」

大好評につき、第三回目の開催となりました!

今回の作品テーマは「クリスマス🎄」

 三回目ということで内容もレベルアップ!

お好みの絵柄を選び、トレーシングペーパーを使ってお皿にデザインの下絵を写す作業から始まります。

クリスマスリースやキャンドル、雪だるまなどのデザイン、オリジナルの絵柄に挑戦される方もいらっしゃいました。

 イッチンと呼ばれる真鍮製の先金を使用し、クリーム状の盛り絵具で絵付けし、最後にガラスの粒を施していきます。

また各色の絵具も本来なら粉状の絵具をふのりと混ぜるところから準備してクリーム状にし、

かっぱと呼ばれる袋の先にペン先となる「イッチン」を取り付け、その袋の中に絵具を入れるのですが、

今回のワークショップのために杉山先生がお一人でご準備くださいました!ありがとうございます!

いざ、下絵に沿ってイッチンで輪郭をなぞりますが、すーっと同じ太さで線がひけません!

普段私たちはパソコン中心で、毛筆で書くこともありませんのでなかなか思う線が描けませんでしたが、イッチンを持つ手の力の入れ具合が大切だとだんだんわかってきます。

直径8cmの小さな豆皿に向かって、皆さん背を丸め、イッチンを持つ手加減を調節しながら、少しずつ、しかしながら、一息に描いていらっしゃいました。

輪郭線の次は、絵具で彩色です。

杉山先生のお手本の作品を目指しますが、モリモリに塗った方がいいか、薄めに塗った方がいいか迷います。

絵付けが終わるまでに正味1時間はかかったでしょうか。

参加者の皆さんどなたも一喜一憂しながらも、完成品を隣同士見比べていらっしゃいました。

こだわりの詰まった思い思いの煌めくクリスマスの作品が完成です!

大人も子どもも、さらにはフランスからのお客様も参加され、名古屋独自の文化を楽しみながら

和やかで充実した時間を過ごされました。

この後、作品は杉山先生がお預かりし持ち帰っていただき、焼成してくださいました。

後日完成品をお渡しすると、どなたも予想以上の出来栄えに感嘆していらっしゃいました。

楽しい時間とともに、「名古屋絵付け」の歴史や文化にご関心をこれからもお寄せいただけたら嬉しいです。

ありがとうございました!

                                                  

戦後の名古屋の陶磁器産業と「薔薇の市ノ木」と呼ばれた絵付け職人

第二次世界大戦後、名古屋の陶磁器産業が日本の復興を下支えした時期もありましたが、高度経済成長期後は徐々に日本の陶磁器産業自体が衰退の時期を迎えます。

円高(昭和60年のプラザ合意で1ドル230円から150円台に突入)、海外の安価な商品の流入、機械化、食生活の変化が大きな要因でしょうか。

欧米向けに作られた作品は、名古屋陶磁器会館のほか、横山美術館でも展示されています。

名古屋陶磁器会館は1932年(昭和7年)竣工し、名古屋陶磁器貿易商工同業組合の事務所として建設されました。

名古屋陶磁器会館は幸い戦禍を逃れ、「国登録有形文化財」、「名古屋市景観重要建造物」に指定され、建築物としても大変貴重です。現在は作品展示や販売、貸スペースとして運営されています。

名古屋の陶磁器産業としてはノリタケや鳴海製陶が有名で高級食器を製造販売しています。

かつて、ノリタケの絵付け職人として活躍した市ノ木慶治(しのきけいじ、1891-1969年)という人がいました。

名古屋市東区生まれ、1905年森村組絵付工場(現ノリタケカンパニー)に入社しました。

彼が描く薔薇の飾り皿はまるで一枚の絵画のようで、その素晴らしい画法は海外でも非常に高く評価され、「薔薇の市ノ木」と呼ばれました。唯一、彼が絵付けした作品には、K. Shinokiとサイン入りを認められました。

その市ノ木慶治の作品の魅力に迫る、杉山ひとみ先生の講演会が横山美術館で開催されます。

絵画・彫刻芸術が一堂に会す近代・現代「陶磁の技巧絶美」の展示も行われます。

圧巻の美しさと歴史に触れてみませんか?

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